オタしなみ

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【評価レビュー】おやすみプンプン 作者:浅野いにお

おやすみプンプン 作者:浅野いにお
週刊ヤングサンデー:2007年15号〜2008年35号
ビッグコミックスピリッツ:2008年47号〜2013年49号

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【評価 80点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評
2010年代のサブカル漫画家代表へ浅野いにおを押し上げた傑作。
「何となく嫌いな漫画家は?」というアンケートを取ったら間違いなく1位になりそうな浅野いにお先生だが、そんな人たち片っ端からこの『おやすみプンプン』を読ませたい。なぜなら、この漫画めちゃ面白い。
2000年代の若者の描き方としてこれ以上の正解はない。そう感じさせられる隅々まで考えられた傑作。
 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)

【19点】

小野寺プンプン(旧姓:プン山)、ヒヨコのような外見で描かれるフザけた名前のプンプンが主人公として演出されている本作。

前置きとして、本作の演出含め世界観・設定は無敵である。
なぜなら、『おやすみプンプン』は
作画:南条幸 原案・監修:小野寺プンプン
という主人公とヒロインが描いた作中作品だからだ。
※原案の部分は、個人的解釈です。

受け入れ難い作中演出の宗教団体や背景で出てくる狂った人々。概ねの物語を南条幸が描き、何の脈絡も回収もない「神様」や「狂った人々」はプンプンが監修している。
南条幸が惚れたプンプンの常人には理解できないが、何処となく共感だけはできるという彼の魅力を内包することに成功した作品、それが『おやすみプンプン』である。

浅野いにおが格好つけて自分だけの世界観を押し付けていると捉えると読んでいて不快に感じる人もいるだろうが、「プンプンが考えました」そう言われると受け入れざる負えない。 正直ズルいが、最初期から張り巡らされた伏線とその回収の手腕から参りましたと個人的には降参しました。

初見の人が本作を受け入れるかは置いておいて、キャラ・世界観・設定はほぼ満点。
−1点は、田中愛子はもっと魅力あるキャラだと思うから。

 

・エンターテイメント(20点満点)

【13点】
「鬱」も当然エンターテイメントです。
停滞するハズの現代を舞台にした物語が、ここまでジェットコースターばりに楽しませてくれる展開が盛りだくさんのは本当にありがたい。

恋愛面というか肉体面といっても良いかもしれないが、読んでいて常に読者の予想と反したり飛び出していったりと満足です。
ただ、読者が楽しむ展開かと言うとオナニーの回数が多すぎることと、どのHも全部投げやりor辛い心中。という作品としては良いかもしれないがエンターテイメントかと言われると難しい。

 

・ストーリー(20点満点)

【16点】
本当に本作の伏線回収は凄い。特に7巻辺りまでは完璧に近いと思う。
お母さんの愛や、南条幸の登場。当然、感性だけでは描かれてない面白さが本作にはつまってます。

後半に関しては、本作が傑作になっているからこそラストの惨劇に向けての助走が長すぎてしまったと感じる。『おやすみプンプン』読者としては、ラストの惨劇はまぁ予定調和かなという気がするので、序盤の展開速度で慣れている分「7月7日まで遠いなぁ」という気持ちになっていた。

あと、流石に作中作品です!という鎧は着ていても、「この宗教団体の話いる?」という思いは最後まで消えなかった。もう一人の主人公になり損なった関くんの回収の場としては何だか消化不良感はありました。

 

・面白さ(20点満点)

【17点】
現代を舞台にした人間ドラマという本作を演出でここまで面白く描いたというのは、本当にすごいし、文句なく面白い。

最序盤からの家族愛の展開もそうだが、田中愛子の展開も予想を裏切り期待に応えてくれており大満足です。

 

・終わり方(20点満点)

【15点】
本当にいい終わりだと思う。
浅野いにお先生が、インタビューでプンプンが死ぬラストも考えていたが死ぬことは楽そうなのでやめた的なことを仰ってました。確かにそうだなと思うし、読者としてもこいつが死んだらそれはそれでスッキリしすぎてしまう。
それは『おやすみプンプン』とは呼べないし、
「おい、プンプン勝手に寝てんじゃねーよ。最後まで苦しめ」
こんな感じがちょうど良いと思う。

ラストのハルミンのこいつも結構苦労して順調な人生じゃなかったんだな。
人間みんなそれぞれ闇があるし事情があるのです。そんならしい終わりだったと思う。

 

 

以上となります。