【評価レビュー】バジーノイズ 作者:むつき潤
バジーノイズ 作者:むつき潤
ビッグコミックスピリッツ:2018年24号〜2020年6号
【評価 71点】※採点基準についてはコチラ
◆総評
現代バンド漫画。
表紙の装丁、帯の推薦コメント、5巻完結というボリューム。
”売れる”ことに全てを割かず、ただ著者の描きたいことが詰まった最高にクールな漫画でした。そして、この作品がこうやって出来上がったのは潮や航太郎のような人物がいたから何だろうな。と思わせてくれる全てが素晴らしかった。
◆点数内訳
・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【19点】
現代が舞台です。
そう言って、本当に現代の”リアル”を描き出せる作家も作品も稀有だと思う。
本作は間違いなく”リアル”な音楽・バンド漫画だった。
キャラクターも最高だった。
特に潮のキャラが良い、何も考えていないようなちょっとイタい女。女性からも男性からも間違いなくリスペクトはされないキャラクターだけど、作中キャラクターから彼女は愛されている。
ちょっと違うかもしれないが、『イエスタデイをうたって』の晴ちゃんを思い出させるような唯一無二の明るさと可愛さを持ったキャラクターの潮は本当に魅力的だった。とベタ褒めではあるが、不思議なことに5巻のラストまでは「この潮ってキャラやっぱウザいなぁ」くらいにしか思っていなかったのが面白いところ。
主人公や周りの仲間、大人たち全てをリアルに描かれており最高でした。
・エンターテイメント(20点満点)
【12点】
音楽の表現を”丸とノイズ”を使うことで、感情表現とも併せるという発明というべき技法がとにかく素晴らしい。
音楽が鳴り始めたときに、丸で画面を埋め尽くされることが本当に読んでいて気持ち良かった。まさにエンターテイメント!グルーヴ感が良い!←言ってみたかっただけ
人間関係については、5巻という枠もあったので深掘りはしていないが、それはそれで問題ないようにも感じる。現代の若者がリアルに描かれているので、深掘りしても知ってた。という展開になりそう。
ただ、物語の起伏が読んでいて予測がつきやすく「いま、いい感じだけどまたどうせ主人公が鬱になってめんどくさいことになるんだろうな」というようなちょっと読中にエンターテイメントが多かったかというとちょっと微妙。
・ストーリー(20点満点)
【15点】
第1話の最初の見開きで、すでにバンドメンバー全てが揃っているという著者の思い通りの物語が描けたことが一目でわかる完璧なストーリー構成でした。
読者としてですが、この物語が一体どこに向かっている物語なのか。それがわかりづらかった印象。読み返すとしっかりと明示されているものの、結果的に本作を通して期待していた展開を全部読めたかというと少し微妙。
なぜかと言うと、タイトル通り「現代のバズった瞬間」それが見れると期待してしまっていた。連載を追っていたのでその印象が強いだけかもしれないが、やっぱりそこがもっと見たかった。
・面白さ(20点満点)
【10点】
前項でも書きましたが、読んでいてわかりやすい展開ではありました。予想外なのは、想像以上に現代の若者がキレやすく、傷つきやすいようで意外と丈夫ということ。
予想を裏切り、期待に応え続けたかと言うと5巻と言うボリュームを考えると面白さ、つまり読者を没頭させるより読後に心に残る作品として作られているので正直ここは仕方ない部分が多いと思います。
・終わり方(20点満点)
【15点】
ラストの潮ではなく、最後のレーベル契約での航太郎とのやり取りで泣きました。そのときに「あぁ、こう言う漫画か」と才能の自己満で完結する世界ではなく、人との繋がりが音楽でも最も大事なことである。
そんな一番大切で当たり前の結論に、あの突飛な冒頭から繋がって行くのは、本当にカッコいい!
正直、もっと先が読みたかった。バズった後、清澄がラジオを初めてそこに潮が乱入して超炎上するところとか読みたかった。
でも、この暖かな読後感を頂けたので満足です。
以上となります。