オタしなみ

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【評価レビュー】Stand Up! 作者:山川あいじ

Stand Up! 作者:山川あいじ

別冊マーガレットザ マーガレット:2012年2月号〜2018年6月号

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【評価 65点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

4巻に亘る最も詩的な少女漫画。
この漫画を評するときに「詩的」と言うしかないのが悔やまれます。
なぜこの漫画が6年間もの連載期間をかけて4巻で完結したのか。真実はわかりませんが、個人的にはこの6年間も納得できるクオリティの作品です。

少女と少年の恋、青春、学校。
描き尽くされたこのテーマですが、山川あいじ先生ほど日常をここまで深掘りできる著者はいないのではないでしょうか。

漫画の表現って無限大!
そんなことを感じさせてくれる作品でした。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【12点】

自身の魅力にまだ気づいていない美人な女の子とクラスで人気者の男の子。
あぁ眩しいな。と言う取っ付きにくさからどうしても入ってしまうが、山川あいじ先生の演出によってそんなことは気にならなくなりました。

主人公二人は漫画という媒体では珍しい勝ち組的な存在だが、実生活だと見かける二人でもある。そんな二人を漫画として描いたからこそ本作は面白いのであってキャラとして突飛な訳ではない。

作中後半になると、新たなキャラや搦め手の再登場キャラも現れる。
ただ、これも山川先生の演出能力が高過ぎてビビるが、キャラとしてはよく居ると言えばよく居るかな。

 

・エンターテイメント(20点満点)
11点】

恋とカップルの残弾はまだまだあったなぁ。でも仕方ない。

本作はエンターテイメントではない気もする。だって「詩」なんだもん。
誰もが楽しめるのかは微妙だし、僕自身も先生の意図に気づけていない箇所は無限にあるだろう。

主人公たちの恋は描いてくれた。ただ、その結末は一体どうなるのか。
そのまま幸せになるのか? 大学生になったら別れるのか?
恋としてはあまりに派手に燃えていた。

作中キャラ全員の恋の矢印はしっかりと明示してくれたのだが、その行方や終着を示す展開があると楽しみどころが増えたかなとも思いました。

 

・ストーリー(20点満点)
【14点】
こんなストーリー展開、あんまりないので何とも言えない。

読んでいて感じたのは、山川あいじ先生が漫画家として成長し過ぎてしまい、作中に起こる全てを面白く描けるようになってしまった結果、オーバーフローを起こした。
そんな風に感じだった。

漫画としては結構歪に進んでいる。主人公たちの物語に見せかけて、実際はその物語は数話で終わっており、実は他の物語が本作にはいくつも内包されていた。
そんな展開ではあるが、最終的には主人公たちの物語で終わり。そんな締め方でした。

本当は、主人公たちと言っているが、二人ではなく古谷卯多子の物語だったのかもしれない。

 

・面白さ(20点満点)
【20点】
演出も混みの採点ですが、演出も混みなら20点では足らないというジレンマ。

さっきから演出がすごいすごい言ってますが、何が凄いのか。
・卯多子が隣の席の原田を見つめるとき、机に頭を倒して見ているのでその画角で見て
 いる卯多子の視線でコマが描かれている。

・ 作中後半、キャラクターが感動したり泣いたりしているときそれを顔をアップにする
 ことで描写をするのではなく相手の顔見ているその相手の顔をブレさせて描くことで
 それを表現。

こういうのがね、いっぱいあるの。ヤバイの。この少女漫画凄いの。
基本的に本作は、先生のこだわりが細部にわたって詰まっている。このキャラの感情を表現するためのセリフはどう言った背景がいいだろう。と思ったとき、多分そのキャラが言っているときの心象風景を描いている。そんな気がします。
こう言った表現の数々から「詩的」と表現しております。

作中の展開も後半は怒涛の展開。新キャラを中心に他の恋も始まり、過去の思いも引きずり出しての展開。当然、読んでいて止まることなく最高でした。

この漫画が3年も休載してそれを待っていた戦士たち。お疲れ様でした。

 

・終わり方(20点満点)
【9点】

少し前項等で触れましたが、山川先生の描きたい・描ける規模が大きくなり過ぎたため終わらせたのかな。という気がしました。そのため、後半に掛けての面白さが飛び抜けております。

そして、その物語が明らかに主人公カップルから話から離れてしまうことも明らかだったように思います。だからこそ休載を挟んで完結したように思います。

ただ、タイトルは『Stand Up!』なんですよね。
作中ではその後、sit downとも言っているが、タイトルはあくまでも立ち上がり、座る=着地についてはまた別の物語という意味だとしたらそれはそうかな。と勝手に納得もしました。

 

とりあえず、原作付きではなくとんでもない規模感で、年代も様々な連作群像劇を描いた山川先生の作品を読みたい。それだけです。

 

以上となります。