オタしなみ

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【評価レビュー】ラストゲーム 作者:天乃忍

ラストゲーム 作者:天乃忍

LaLa:2011年9月号〜2016年8月号

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【評価 73点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

男女ともにキュンキュンできる恋愛少女漫画。

王道恋愛漫画とも言える、二人の恋路を11巻に亘って純粋さを味付けして描かれた本作。
そしてこの作品は、読者に愛される作品だとも思う。

それはひとえに天乃忍先生が描くキャラクターたちがとても真っ直ぐで嫌味なく、読者の心を掴んでしまうからでしょう。

男女問わず、オススメしたくなる少女漫画です。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【16点】

王道恋愛漫画に王道キャラクターが揃っている。
本作のすごいところは、そんな中でもキャラクターが自由に活き活きと描かれていることだ。

二人の恋が実るまでの物語を描く中で、普通の漫画であれば二人の間に試練をドラマチックに描くことで巻数を稼ぐのが定石だ。
しかし、本作は違う。

特にドラマチックなイベントはなく、ただただ二人が楽しく大学生活を過ごしているところを描くだけで漫画として成立させている。

これは間違いなく天乃先生の作り出したキャラクターたちの魅力のおかげである。

特にヒロインである九条がめちゃ良い!
ビジュアルもですが、本作のストーリーの根幹にもなるキャラ設定が最高です。

九条は幼少の頃に父親を亡くし、母子家庭となり母親を支えることを第一に考えるようになっていく。その結果、純粋で素晴らしい女の子に育ったものの恋愛経験もなく無意識に失うことを恐れる少女として育った。

このバッグボーンがあるからこそ、九条は「鈍感」でありそんな彼女を10年間掛けて惚れさせていく主人公である柳の奮闘が面白い。

こういったキャラクター造形が本作の大きな魅力の根幹だとも思っています。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【14点】

主人公とヒロインの二人を描いているだけなのにめちゃくちゃ満足できた。

ライバルたちの展開は予想できたが、やはりキャラクターたちの行動は予想外のことも多く結果はわかっているにも関わらずついついライバルを応援したくなる。そんな不思議なことを思わせてくれる展開にも大満足でした。

特に終盤の読者の我慢が報われるイチャイチャ展開には、キュンキュンのキュンキュンで胸がいっぱいになりましたね。

 

・ストーリー(20点満点)
【16点】
一巻では小中高大とあらゆる年代を描き、その後の大学生編をメインに描いた本作。

学生としての「楽しさ」も「恋」も知らない九条を小中高と負け続けてきた柳が大学生という学生にとって最も自由で楽しい日々を共に過ごすというストーリーは素晴らしかった。

本作の構造として九条という心を閉ざしたヒロインを不器用な柳が一体どうやってその心を解きほぐさせるかというストーリー構成になっている。

そんなストーリーを特にドラマチックな事件なしでただただキャラクター同士の触れ合いで描いていくというストーリーは他にない本作だからこその物語だと思っています。

 

・面白さ(20点満点)
【11点】 

本作は、予想を裏切るといった展開は最初の流れ以外はあまりない。

それは本作が元々3話構成だったからこそ仕方ないこともであるし、逆に奇を衒わなかったからこそキャラクターの魅力が存分に出た作品だとも思う。

九条と柳のやり取り自体は最高に面白かったので、良し!です。

 

・終わり方(20点満点)
【16点】

本当に幸せなハッピーエンドっていいですね。

ただそのエピローグでこの作品って凄いなと改めて感じさせられました。
九条というキャラクターは、大学生活の中で楽しさを知り、恋を知った上で、大人になりました。今まで成長を見てきた彼女が、明らかに今まで読んできた九条ではなくなっていたのです。

当然、見た目も言動も九条ではあるのですが、僕たちが読んできたラストゲームにいたハズの純朴で不思議な少女だった九条とは明らかに違うんです。

エピローグは読者にとってはご褒美みたいなものなので、いつもただただ幸せな姿に満足させて頂くことが多いのですが、明らかに大人として成長している九条の姿に驚かされつつ天乃先生の描くキャラクターパワーに圧倒されました。

 

以上となります。