オタしなみ

漫画の点数レビューがメインです。

【評価レビュー】惑星のさみだれ 作者:水上悟志

惑星のさみだれ 作者:水上悟志

ヤングキングアワーズ:2005年6月号〜2010年10月号

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【評価 79点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

Q.10巻くらいの面白い漫画教えて
A.『惑星のさみだれ

こう答えている訳ではないが、一番見るしすごくしっくりくるベストアンサーだと思う。

「漫画」らしい物語に関心させられるし、熱くさせられる。
ネット漫画オタク好きたちの聖書といえば!

惑星のさみだれ

「漫画」が好きであればあるほど好きになれる。そんな作品だと思う。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【11点】

点数が低い!
漫画らしい設定に納得させる伏線と答えがあるし、キャラクターも最高じゃないですか!
確かにそうとも思うのですが、個人的に本作に対して厳しく見てしまうのがキャラと設定です。

まず、フィクションを描く上でフィクション部分は基本一つまでだと考えています。
どういうことかと言うと、本作で言うと「遥か未来から神に近い力を持った怪物がやってきている」これが本作のフィクション部分になります。
この他に非現実的な奇跡を何度も何度も使われると、読んでいても感情移入が難しくなってきます。読者としては「こんな未来から世界を破壊する怪物とどうやって戦うんだろう」そんな妄想をしながら読んでいるのにもしとんでもない奇跡でその怪物を倒してしまったら読んでいて萎えてしまいます。

このように全てをフィクションで解決するのではなく、フィクションを利用した上で読者の一歩先を行く展開を描くことが非常に重要だと考えています。

能書きが長くなってしまいましたが、そう言う意味で本作はフィクション部分が多いです。
➀未来から怪物が世界を破壊しにやってくる
➁未来にも関わらず、科学ではなく超能力というだけで敵の力を表現
➂主人公の超人的な精神を生み出した背景
➃普遍的日常の延長上としては不可思議な肉体強度

大分指摘が厳しめですが、本作はフィクション部分が非常に多いです。
これが本作が「漫画好き」に愛される理由でもあるし、漫画好き以外には愛されにくい作品の理由だとも思います。

キャラについて
色々言ってますが、キャラは基本的に大好きです。主人公であるゆーくんの精神バックボーンは気になりますが、ヒーローを目指したが悪に屈し、本物のヒーローである半月に救われ力を受け継いだ後にヒーローとしての魂も取り戻す。

物語の最初に魔王を目指す姫に付き従うという悪の道に進んだにも関わらず、途中で気づいたらヒーローになってしまっているという矛盾を孕んだキャラ作りは素晴らしいと思う。

逆にいうと姫が病弱な結果、世界を破壊するという流れは想像しづらいのですが、逆に言うとその発想は子孫が世界を破壊したがってるんだからそりゃそうか。とも思いました。

設定について
未来から怪物が世界を破壊してきていることや、獣の騎士団やビスケットハンマーなど異様に子供設定な秘密の回収は最高に上手いと思う。そんな中で気になるのはやっぱり未来から来る怪物の力が超能力で片付けられしまっていることですかね。

もう未来人の超能力者は、ちょっと盛り過ぎてて何でもありやん。。。となってしまう。

この辺りに無茶がなければさらなる傑作だったのかなと思いつつもそうなるとおそらく10巻ではなく20巻以上続いていた気もするので難しいかなとも思います。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【14点】
バトル・恋愛・笑い
どの要素も上手く落とし込んでいる作品だと思う。

特に恋愛と笑いは上手く作られている。ただ、バトルが少し退屈だった。
どのキャラが戦っているのか、どのキャラが苦しんでいるのか。そういう部分では楽しかったが、バトル自体の面白さは少なかったかなとも思う。

 

・ストーリー(20点満点)
【19点】
ほぼ満点。

ストーリーの流れが最高すぎる。オタク魂が染み付いているからこそ!と言える読みやすさと最後までの美しい流れには感服致します。

特に3巻の東雲半月退場からのラスボス&騎士団の集結の流れと、最終決戦からのエピローグまでの流れは凄すぎる。

水上先生の凄いところは、逆に他作の『戦国妖狐』ではあえてストーリーに力を振らずバトルと熱さに振った作品も描けていることだと思う。

 

・面白さ(20点満点)
【17点】 
設定に対してのフィクションの多さのせいで、物語の根幹を支える部分の種明かしは気になりますが、最高に面白かったですね。

キャラクターの退場もアッサリ2人描いた後に日下部くんという重過ぎる死を描き、その後は騎士団からの脱落者は描いていない。読者としては日下部くんの時点で今後もキャラの死を覚悟させられてしまう。
だが、そう仕向けている水上先生はそれ以上その部分を描くことはない。

この著者の手の上で転がされている感が、本作は本当に上手い。

こう言った部分と主人公とヒロインのキャラクター異常性が合わさり、本当に先が予想できないし読んでいて本当に面白い作品に仕上がっているのだと思う。

 

・終わり方(20点満点)
【18点】

エピローグ最高ですよね。
さらに描き足らなかったエピローグとして外伝のスポットが茜くんというのがたまらん。雪待さんとの部分を描いてくれるという……!!!! 神!! 

エピローグ視点がゆーくんなのが、安心と安定の采配具合に胸つかまれます。そして、さみちゃんの闘病という道を描いているのも最高です。

やっぱりね、エピローグはこれくらい描いて欲しいのよ。全然描かずに変な第二部とか描き始めるよりよっぽど良い。

エピローグ前のゆーくんVS三日月という流れも最高。
本作のバトル要素がもっと面白ければ、ゆーくんVS白道さんの戦いももっと熱くなれただろうなぁ。と思ってしまう。
本作の根幹を成す要素が超能力ではなく、科学の力であれば、バトルに法則性が存在してもっと楽しめたろうなとどうしても想像しちゃいますね。

 

あーだこーだ言いましたが、やっぱり最後まで一気に読むと
「10巻くらいの面白い漫画教えて」
と聞かれたら
惑星のさみだれ
そう答えてしまいますね。

 

以上となります。