【評価レビュー】青のフラッグ 作者:KAITO
青のフラッグ 作者:KAITO
少年ジャンプ+:2017年9号〜2020年19号
【評価 74点】※採点基準についてはコチラ
◆総評
「面白いけど好きじゃない」
これからしばらくこの作品を読み返すことはあんまりないと思うけど、度肝抜かれるくらい面白かった。青春モノとして今後も記憶に残る名作だと思う。
『クロス・マネジ』『バディストライク』打ち切りが続いたものの青春という視点からはズレなかったKAITO先生。
そんな先生のコメントから、「結果よりも過程を描きたい」この思考を貫き続け丁寧に過程を描いた上での衝撃結末が待っている青春恋愛漫画を描くという初志貫徹した作家性を改めて感じさせられる素晴らしい作品でした。
ついでに本作を勧める場合のコメントは
「秒速5センチメール好きなら、ぜひ」
さらについでに余計な一言を付け加えるなら、
「聲の形読んで、物足りないと思ったあなたにぜひ!」
◆点数内訳
・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【10点】
キャラは完成度としては高いですが、読者が面白いと思えるキャラかと言うと少し微妙な気もします。
描かれる結末から思うと「これしかない!」と思えるキャラたちですが、読み終わったときにこのキャラたちにもう一度会いたいかと聞かれるとそうでもない。
青春を描くためにいくつもの舞台設定を続けた末に、普遍的な「高校三年生」という設定に行き着いたのは逆に面白いなと思う。
・エンターテイメント(20点満点)
【12点】
本作の恋愛面は確かに面白い。
ただ、読んでいて気持ちい恋愛も展開も少ない。
本作が本当に一番すごいところは、キャラクターの会話劇だ。それぞれのキャラクターが思考を持ち、彼らで話し合いながら物語の展開が進んで行く。
その会話劇を読者がどこまでエンターテイメントとして楽しめるかと聞かれると少し微妙かなと思いました。そういった部分が多いのでこの項目の点数は上がりづらいですね。
・ストーリー(20点満点)
【18点】
ストーリーは本当すごい。
8巻というまとまりもそうですが、結末から考えたときの過程として素晴らしい。
ちょうど8巻も読むとみんなに愛着が沸いてきて、結末での絶望。(※全員が絶望するのかは微妙)この絶望を味わうには抜群の分量なんですよね。
序盤は衝撃の展開を並べることで一気に読ませ、関係性の進展で中盤読ませる。終盤は彼らの将来を描き始めることで読ませていく。
完璧な流れといっても過言ではない。
そしてこの過程を丁寧に描くことで、結末後も楽しめるようにできている。
この結末を受けて、過程を思い返すと確実に主人公たちは地獄を見ている。家族の愛も今まで生きてきた中で主人公は絶対に何処かで妥協してこの愛を受け入れているとしか思えない。
過程を描いたことで、結末後まで深く楽しませる。
改めてすごいストーリー構成になっているなぁと感じました。
・面白さ(20点満点)
【14点】
一気に読んじゃうよね。
キャラクターたちに魅力があるかは置いておいて、彼らが一体何を考えていて、どんな道に進むのか。そこについては惹かれたし、十二分に楽しませてもらいました。
面白さ、読み続けられる良さとして本作には無駄な展開がない。
例えば、体育祭の応援団の流れも始まりと結末は描いても過程はほとんど飛ばしている。過程を描きたいと言ってもどんな日常も丁寧に描くのではなく、ストーリーとして大切な過程を描かれている本作は読みやすく面白いと思う。
本作の演出の部分も上手い。
特に主人公とヒロインが付き合ったことを示す演出が好きですね。
キャラに言わせるのではなく、コマに縦文字で「彼女ができました」この演出はどこか浅野いにお先生を思い起こさせるすごくセンスの光る素晴らしいシーンでした。
・終わり方(20点満点)
【20点】
これは、個人的趣味も出ますが満点でお願いします。
めちゃくちゃ気分悪くて最高!!!!!!!
個人的には秒速5センチメートルより気分悪いですね。
だって二人の選択は明らかに間違っているのだから。
家族は絶対に悲しんでいるし、何より主人公はゲイじゃない。ただ、繋がりを求めた結果こうなってるだけだ。
※ただ、彼女が出来た段階でキスしたり迫ったりという展開がないことや、過去の好きな女性キャラが登場しないことがゲイへの伏線ということもありえますが個人的には違うなとも思っています。
それにしても、空勢ちゃんの結婚式死ぬほど胸くそ悪くて最高でしたね。
こんな胸くそ結末、そんな味わえるものじゃない。
ぜひ、色んな人にオススメしたい青春漫画として推したいですね。
以上となります。