【評価レビュー】ファムファタル 運命の女 作者:シギサワカヤ
月刊電撃マ王 2007年1月号〜電撃黒マ王 VOLUME12
【評価 57点】※採点基準についてはコチラ
◆総評
黒髪ショートの突っかかってくるリケジョの先輩が彼氏持ち=地獄
冬目景 ⇨ シギサワカヤ ⇨ 二宮ひかる
童貞漫画好きが通る三部作、序破急で言うところの「破」を担うシギサワカヤ先生の最も過酷で地獄を堪能できる恋愛漫画が本作『ファムファタル』。
読みづらさと理不尽によって怒りに苛まれる本作は、素晴らしい恋愛漫画だ。
詩的な物語というワケでもなく、ただただ報連相ができてない意地の張り合いみたいな恋愛があるだけだ。
一般小説ではそこまで珍しい物語ではないかもしれないが、漫画だからこそ味わえる体験が本作には詰まっていると思う。
◆点数内訳
・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【14点】
黒髪ショートのリケジョ造形 is GOD
胃が煮え繰り返る地獄のようなキャラ配置には痺れるし、こんな状況を生み出すファムファタル(ここでは悪女の意)を正ヒロインとして描いてみせたシギサワ先生のキャラクターを生み出す力には感服します。
サブキャラ達についてはもっと闇深くても良い気もしたが、本作はファムファタルを描きたいのであって疑心暗鬼に苛まれる乱交サークルを描きたいわけではなかったので難しいところですね。
ただ主人公とヒロインは抜群に素晴らしい。
・エンターテイメント(20点満点)
【9点】
地獄は当然エンターテイメント。
読んでいて本気で読者をイラつかせることが出来る本作は、一流だと思う。
絶対に主人公の立場を味わいたくないし、こんな女いても絶対に関わらない。
そんな女に立ち向かい続けた主人公と迎えた最後のカタルシスは本当に最高だった。
ただ、この物語を楽しむために激烈に読みづらい荒削りなシギサワ節を万人が楽しめるかと言うとそうではないと思う。
負の感情で読み進めさせた末の展開を考えても満足できる読者は少ない様にも感じる
・ストーリー(20点満点)
【10点】
本作は特殊なストーリーは実は存在していない。
ただただ報連相ができない若者たちが勝手に意地の張り合いをしているだけだ。
結果的に、時間が解決してみんな素直になっていく。
・面白さ(20点満点)
【13点】
序盤から中盤にかけては、この悪魔と一体どうなっていくのか……。
そんな期待を読者に持たせる力は本作は尋常ではない。
結果的に、その期待に本作は応えてくれない。最後まで、主人公を信じ共に犬のように尻尾を振り続けた者だけがこの結末を心から喜べるのだと思う。
しかし半分くらいの人はキレるのも否定できません。
・終わり方(20点満点)
【11点】
どうです?
結果的にハッピーエンドな本作。前項でも書いた通り、主人公と同じく犬になれた人だけが満足出来る作品だと思います。
ここで鬱アクセルを踏み込もうものなら、逆にとんでもない収集のつかない作品になっていたと思います。しかし、サブキャラクター達の作り込みがもっと凄まじければ、作中のヒロインがもっとボロボロだったら、おそらくもっと凄まじい展開も読めたと感じます。
負の感情でどれだけの漫画好きが読み進めることが出来るのか、個人的には大好きな作品であり相性も抜群の作品だったので、この空気感が苦手な読者がこのラストに納得できるのかがすごい気になる作品です。
以上となります。