オタしなみ

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【評価レビュー】シュトヘル 作者:伊藤悠

シュトヘル 作者:伊藤悠

週刊ビッグコミックスピリッツ 2009年4・5号〜月刊!スピリッツ 2017年5月号

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【評価 73点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

あらゆる意味で挑戦的な設定の漫画。

少年が文字という文化を残すため、半人半獣のような「言葉を重んじない」わかり合えないものたちとの戦いを描いた本作。

様々な復讐劇と積み重なる死と陰謀と策略が交差した本作は当然読んでて飽きないし結果的には面白かった。

ものすごく元も子もない感想をいうと「これ、文字を巡る戦いじゃなかったらもっと面白かったんじゃね?」という無粋な感想になってしまった。

絶対にこのシュトヘルという作品に満足している人はたくさんいると思う。しかし、逆にもっと楽しめたなと思っている人もいると思う。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【13点】

 設定がキツイよね。
この転生設定は本当に説明出来ないし、別に説明を求めてるワケでもなかったけどご都合が大分良すぎた感は最後までありましたね。
過去と現在を行き来して、文字でのやり取りで物語を進めるという道に進まなかった時点でこの設定が大分お荷物だったと思ってしまう。

キャラと世界観は基本最高でしたね。
物語、文字に残したくなる人物ばかりでした。

ヴェロニカというわかりづらいキャラを読者が理解出来る様に描けてるのホントすごい。ヴェロニカは結末含めて大好きなキャラです。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【18点】

バチクソおもろいのよ。
伊藤悠先生は本当に物語の面白い部分を描く能力、所謂「演出力」が高すぎると思う。

本作は物語の性質上キャラクターがよく死にます。
これは、明確な理由として、ユルールが文字に残すためにも多くのキャラを登場させ、彼が書き残していくというストーリーラインが存在していたからこその死の多さだったと思う。
そんな多くの死を描く上で、すぐに死ぬキャラクターを読者いち早くそのキャラの魅力を知って貰わなければならないし、文字に残すほどの物語も必要である。それを伊藤先生は幾人ものキャラを描いて魅せた。

だからこそ本作は最高にエンターテイメントしている。
感情と戦いと死がいくつも交差し続ける展開は目まぐるしく、たまらないものだったと思う。

 

・ストーリー(20点満点)
【14点】

時間軸、場所、登場人物、目まぐるしく変わっていく中で本作は伊藤先生の演出力のおかげでめちゃくちゃ読みやすいし結末を見ると大筋はしっかりと抑えて物語が進んだこともわかる。

ただ、この項目の点数が低めなのはこの物語が一体何を目指した物語なのかがわかりづらかったからだ。

ユルールは良くも悪くもジャンプ主人公ではなかった。
ユルールが「何のためにどんな方法で西夏文字を護りたかったのか」これがよくわからなかった。結果として西夏文字を未来へ紡いだワケだが、作中では彼が何をしたくて何を考えているのかに共感することが出来なかった。読んでいても「え?ならもうその人に西夏文字託せばええやん」みたいなことが多かった。
結果的には権力、体制側につくという方法にたどり着いたが、ユルールは一体どこでその方法が是であると考えてその方法に至ったのかが正直わからない。その方法で良いのであればツォグ族で頑張れば別に……とも感じた。
こういった部分から、本作のメインストーリーに感情移入することが読者として難しくなっていたと思う。

 

・面白さ(20点満点)
【16点】 

そりゃおもろいのよ。
無限に魅力あるキャラを作れる能力と伊藤先生の卓越した演出力があれば、アンリミテッドコミックワークスよ。 ??

みんな、先生怒らないから正直にハラバルだけでなくシュトヘルもユルールに殺されたと思った人、手を挙げなさい。
うん。そうだね、先生もそう思いました。そう思った後、14巻でのスドーの姿をしたシュトヘルが最高すぎて叫びましたね。

こんな感じで伊藤先生の漫画は本当読んでて飽きないですね。

マイナス4点分はやっぱりメインストーリー部分と転生設定への不信感かな。

 

・終わり方(20点満点)
【12点】 

ハッピーエンドでございます。

シュトヘルがスッキリしない理由として挙げたいのが、最後にみんなの物語を文字として紡がなかったことなんですよね。
作中に何度もみんなを書き残すと言っていたのにその部分を描いてはくれなかった。あの文字の出土だけでは納得が出来ないんだよなぁ。

最後、スズキさんとスドーで美術館とか行く展開とか、妄想しちゃうしそれが読みたいんですよね。漫画とは言え、このシュトヘルという作品であれば最後文字だけが4ページくらい続いてエピローグでも個人的には全然良かった。

「文字は人と逢いたがってる」
うん!だから俺も逢いたいのよ!!ユルール先生!!!!教えて!!!!!!

 

以上となります。