オタしなみ

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【評価レビュー】リボーンの棋士 作者:鍋倉夫

リボーンの棋士  作者:鍋倉夫

週刊ビッグコミックスピリッツ:2018年25号〜2020年38号

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【評価 59点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

また大好きだった漫画が打ち切られ、大好きな漫画では無くなってしまった。

しかし本作は不思議な魅力があり、多くの読者から愛される漫画だったと思う。
まずはこの凄まじく魅力のない1巻の表紙を見て欲しい。遠近感が狂って右手がパラサイトに寄生されたミギーでも描いているのか?と思わせてくれるこの表紙、大好きです。
2巻の表紙なんて、確実に「※パッケージはイメージです」と注意書きがないと詐欺になる。ただただフリーターの主人公が勝手に着替えてプロ棋士のコスプレをしているだけなんだもん。そんな表紙も大好きです。

本番の対局の背景は真っ白なテケトーなものばかりなのに、4巻の第33回を見て欲しい。対戦相手のお父さんのモノローグの自動車工場の背景がこの漫画で最も気合の入っている。そんな意味不明なところも大好きです。

そう、この漫画のことが大好きでした!

 

という叫びはさておき、本作は数ある将棋漫画でも最も挑戦的な作品だったと思っている。

現代に限りなくフォーカスしていく形式は非常に挑戦的で読んでいてワクワクさせられた。そして何より本作は、過去の将棋漫画と一線を画した「メンタル」という部分に最も力を入れようとした作品だと思っている。

「棋力」ではなく「メンタル」
他の盤上の競技漫画でもよく見る展開ではあるが、本作は明らかにメンタルに特化して描く設定になっている。

なぜ、実力も才気もある主人公がプロになれなかったのか。
なぜ、プロになれなかった彼らがここまで強いのか。
なぜ、プロはここまで強いのか。

当然才能の世界ではある。しかし、試合で実力を発揮することも普段の練習での向き合い方も「メンタル」によってその人の棋力は大きく変わっていく。

プロ、アマを描ける本作だからこそ、それぞれの登場人物たちの将棋との千差万別の向き合い方は本当に面白かったです。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【14点】 

プロになれなかった元奨励会三段の29歳フリーターの再起。
非常に面白く興味深い設定だった。

現代だからこその登場人物も多く読んでして新鮮な将棋漫画だった。

ただ、打ち切りの弊害なのか描く気がなかったのかは不明だが、主人公が奨励会三段のとき何故将棋を楽しんで打ち続けるメンタルを失ってしまっていたのか。

この真面目で魅力ある主人公がなぜ、金髪で面白味のない将棋を指してしまっていたのかは、本作でも最も気になる部分だったと思う。

そこを最後まで描かなかったのは、特に考えていなかったのか尺が足りなかったのは不明だが、その部分がわからないと主人公のキャラクター性を評価するのは難しいとも感じました。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【15点】

アマとしての戦い方、プロとしての戦い方、プロになれなかった敗北者としての戦い方。

どれも非常に面白かった。だからこそ将棋の戦法がわからない読者にも本作の試合は非常に面白かったと思う。本作がもし30巻を超えるような大作だったら戦いにも飽きていたかもしれないが、少なくとも7巻では飽きることなどなく、どの試合も非常に魅力的な戦いだった。

もっとサブキャラクターを描く時間があれば、恋愛面も描けたことでしょう。宇野ちゃんの話は対局含めてもっと読みたかったですね。

 

・ストーリー(20点満点)
【13点】

大筋の流れは完璧だったと思う。

ただ、終盤の安住が立ち直り本当に強くなる流れは、打ち切りが原因なのかどうしても面白味に欠けてしまった。

打ち切り漫画のストーリーラインを評価するのはどうしても難しい。

 

・面白さ(20点満点)
【10点】 

めちゃめちゃ面白かった。

何故なら、主人公の安住というキャラクターはみんなが応援したくなるような魅力ある棋士だったからだ。しかし、それは後々描かれるであろう部分を楽しみにしているからこその魅力でもあった。

プロになれなかった棋士が、トッププロと戦う。
この下克上スタイルは最高に面白いが、現実的に考えてそんなことはありえない。本作は将棋の厳しさを描かれていることも魅力の一つであるからこそ、何故安住がプロになれなかったのか。

これが最も本作が描かなければならなかった部分だったと思う。
謎の金髪姿に鋭い眼光。作者は絶対に何かを用意してくれていたのだろう。

しかし、その部分が描かれることはなかった。
だからこそ主人公の魅力の根源が描かれていない時点で、面白いと思って読んでいた部分もgmに変わってしまう。何故なら、期待していた部分は描かれることはないのだから。

 

打ち切りだから仕方ない。そんなことはない。
1巻のgmのような表紙でもスピリッツを読んでこの漫画が面白いと気づいていた読者はすぐに買い支え、2巻発売までに重版まで持っていった。

しかし、この漫画はそれに応えることはしなかった。
2巻以降の表紙はネタとしては大好きだが、売る気は一切感じられない。2巻〜5巻までの表紙を見て、この漫画を読んだことのない人が買おうと思うだろうか。
1巻はまだわかる。カラオケバイトの服装をした棋士が描かれているだけでこの漫画がなんの漫画なのかがまだわかる。しかし、2巻以降は何一つわからない。むしろ混乱させるだけだ。

2巻の表紙が工場勤務の姿をした土屋が表紙だったら、この漫画の寿命は大きく違ったと思う。

漫画の表紙として魅力がなくても許されるのは3巻までだ。6巻でようやく表紙を頑張り始めてももう遅い。

フォローもしてあげたいが、次回作を期待するしかないのも事実ですね。

 

・終わり方(20点満点)
【7点】 

打ち切り以外の何ものでもない。

マチュア棋士という将棋だけでない人生を歩む人々の着地点を描けなかった時点で、本作の面白さは半減以下になってしまう。

ただ、安住と土屋が前を向いて将棋を指せるようになったという部分だけは描けたことはよかったと思う。

 

以上となります。