オタしなみ

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【評価レビュー】羊のうた 作者:冬目景

羊のうた 作者:冬目景

コミックバーガー1996年1月号~コミックバーズ2002年11月号

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【評価 78点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

冬目景先生の描いた、和の吸血鬼もの。

本作の素晴らしいところは、吸血鬼ものを完全に男性向け作品として昇華させているところだと思う。

この設定をここまで男性向けに描けるのは、冬目景先生だけが持つ独特の作家性のおかげだと思っている。

「童貞サブカル漫画好きが好きな漫画家ランキングNo.1」
この永遠の称号を与えたくなるほど、本当に童貞にとって心地よい作品にいうも冬目景先生は仕上げて下さる。「なんで童貞限定なの?」と聞かれると何故かはよくわかんないけど何かしっくりくるからです。

イエスタデイをうたって』を引き合いに出してしまいますが、冬目景先生の作品の中で、最も切れ味があり、人に最も薦めたくなる作品は本作だと思う。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【18点】 

千砂という可憐さと弱さと美しさ全てを兼ね備えたキャラクターと出会えたことに感謝です。もう一人のヒロインである八重樫さんも大好きです。純粋さと可憐さ。二人のヒロインが本当に最高でしたね。
主人公に関しては、冬目景先生らしいいつもの感じで楽しみやすかったですね。

吸血鬼設定については、精神病としてしっかり完結しているので満足です。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【15点】

どう楽しむべきなのかは難しいですね。
本作は文学的な要素が強かったとも思う。キャラクターたちの思いを読み、感じて寄り添っていく。そんな楽しみ方が出来ればすごく楽しめる作品だったとも思う。

登場人物全員が依存的であり溝のある人間関係が築かれている。それらがとんでもないバランスの上に歪に成り立っている。

このどうしようもない陰鬱とした雰囲気が最高のエンターテインメントであり、この作品以外では滅多に楽しむことの出来ない部分でもある。

 

・ストーリー(20点満点)
【14点】

特に悪いところはないのですが、ストーリーの面白さに依存する作品でもなかったですね。

母親の展開や、千砂の体調など伏線はありましたが、それが結末にどこまで繋がっていたのかは何とも言えません。

ストーリーとして紡いでほしかったのは、千砂の結末ではなく一砂の最後の選択への道だったと思っている。

 

・面白さ(20点満点)
【15点】 

 この二人がどうなっていくのか。

わくわくでもどきどきでもなかったけど、ページをめくる手はいつ読んでも止まらない作品だったと思う。

前項でも言っているが、この陰鬱とした唯一無二の面白さは本当に他では楽しめないものだと思う。

「鬱」ではない。そんな衝撃は必要はしない。
儚さで形成された「陰鬱」さとしての面白さは評価されるべきものだと思う。

 

・終わり方(20点満点)
【16点】 

ホントに上手い終わりだよなぁ。と感心させられます。

大満足の終わりではあるが、どうしても気になるのがこの結末が決まっているのであれば、一砂の選択への伏線がもっと欲しかった。

どうしてもこの物語は千砂の物語として描かれていた。それはそれで悪くはないのだが、今後生きていくのは一砂だ。
彼のことを思うと、この先も描かなければ本当の終わりとは言えない。彼はなぜ生き伸びたのか。そこにも理由が欲しかった。

あの薬は本当に自殺薬だったのか。

この終わりは最初から基本的には決めていたそうです。だからこそ、この物語が素晴らしく深いものになったからこそ気になってしまうことが出てきてしまった。

 

終わり方の選択は素晴らしいとも思う。ただ、道中の繋がりもすごく重要だと思った。

 

以上となります。