オタしなみ

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【評価レビュー】鬼滅の刃 著者:吾峠呼世晴

鬼滅の刃

著者:吾峠呼世晴

週刊少年ジャンプ:2016年11号~2020年24号

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【評価 81点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

最強のコンテンツと化した週刊少年ジャンプの王道漫画。

ドラゴンボール幽遊白書と同系統の「世界よりもキャラクターが強い」作品であり、他同系統作品とは違い「キャラクターよりも作品が強い」作品であったと感じました。
物語を始める前から、最初から最後まで考えられたであろうストーリーラインをなぞるかのような清々しさまで感じられる王道漫画でした。

なぜ、ここまで人気になったのか―――。
答えは、読み易さとキャラクターの魅力にあると思っています。

瞬く間に歴史に名を刻んだ漫画がまた週刊少年ジャンプから生まれたという、『友情・努力・勝利』という漫画としてはやはり絶対的な方程式を感じます。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【17点】

全員が100億の男と化してるであろうキャラクターたちは最強です。

鬼滅の刃のキャラクターは、基本的に極端なキャラ付けによって生み出されていると感じます。
極端なほど正義の主人公像⇒竈門炭治郎
極端なほどビビリ⇒我妻善逸
極端なほど野生児⇒嘴平伊之助
この「極端なほど」という前書きをほとんどのキャラクターに当てはめることが出来ると思っています。

これらの極端さだけでも魅力になりますが、極端さがあるからこそギャップも光ります。野生児だけどイケメンであったり、ビビリだけど戦うとカッコ良くて強い。
当然、吾峠呼先生のキャラクターデザインセンスが素晴らしいこともありますが、自身ルールを課されているかのように極端なキャラクターたちを生み出す方程式は王道漫画にとって非常に効果的であり重要であったと感じます。

世界観や設定については、本作は敢えて理由付けをしないことを選択していると思うので、特に言及はないのですが、「念」のような概念もしくは「トリガー」のようなルールを持つバトル漫画の面白さを知ってしまっているので、個人的には減点させて頂きました。

キャラに関しては間違いなく天下無双。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【20点】

国民がここまで楽しめているのが、本作のエンターテイメント性の高さの象徴だと思っています。

本作の評価項目としているバトルなどの部分を細かくみると、本作より面白いバトルを描いている漫画はあると感じますが、本作より読み易いバトルは中々ないと感じてます。
特に中盤以降のバトルのコマ割りと擬音が吾峠先生特有のリズムが完成しており、読み応えがより増していると思っています。ストーリーが決まっているからこその圧倒するほどのバトルシーンや1ページを丸々使ったキャラ立ちページなどによってより読み応えのある作品になっていると感じました。

劇的なシーン以外でも、節々に見られるキャラの個性あふれる会話劇や行動で読み人を飽きさせることない作品でもあります。

 

・ストーリー(20点満点)
【14点】

本作は、過去にあった王道漫画であるドラゴンボール幽遊白書など決定的に違う部分があると思っています。
それは、初めからラスボスとラスボスまでの筋道がある程度決まっていたであろうことです。

ドラゴンボール幽遊白書は著者の天才的な発想でストーリーが支えられています。一つの物語が終わった後の次の物語への繋ぎはどうしても粗が出てしまう。戸愚呂がB級妖怪と知ったときは悲しかったし、天津飯が気功法を打つ以外戦う方法がなかったことも悲しかった(それはそれでいい味出てましたが)。

これらの作品と違い鬼滅の刃は、ラスボスへの筋道が決まっていた。主人公がまず戦えるようになり、鬼と戦い、下弦の鬼と戦い、上弦の鬼と戦い、ラスボスと戦う。
それを逆算するかのように、呼吸を覚え、ヒノカミ神楽を覚え、痣を出し、透明な世界を見るようになる。
つまり、主人公と敵が強くなる段階が上手く重なっていることで、今までの王道漫画と違いより楽しみやすい構造に仕上がっているのだと思っています。

前述の通り、非常に読み易いストーリーに仕上がっております。ただ、読み易い=面白いというストーリーだけを見たときには評価しづらい部分があります。

複雑怪奇だからこそ、優れているわけではありませんが、本作はあまりに王道過ぎてしまいストーリーとしては物足りない部分があります。ただ、だからこそバトルやキャラクターなどを描き易くより王道漫画として突出出来たという一面もあると思っています。

そのため、読み易く素晴らしいストーリーではあるのと思っているのですが、最高に面白いストーリーとはいいがたい部分もあるため少し低めの点数になっております。

 

・面白さ(20点満点)
【15点】 

一度この作品のキャラクターたちを見れば、先を読みたくなるし特に後半に至っては予想を超えるピンチの連続に息をのむ展開ばかりだ。

終始面白い展開ではあるのだが、どうしても王道漫画であるからこそ他で見覚えのある展開がどうしても目についてしまう。

これは本作以外にも王道漫画を読んでいるからこそ感じてしまうのかもしれませんが、展開を含めたオリジナリル性に関して少し乏しく感じたための点数になっております。

 

・終わり方(20点満点)
【15点】 

本作のテーマは、輪廻転生・六道輪廻であると思っている。
生前の行いが重要であり、正しいことを続け戦い続ければ、自身でなくとも同じ思いをもったものが次世代に生まれ紡ぎ悪を滅してくれる。
そんなテーマを感じています。

だからこそ、六道を感じさせるキャラ付けの六体の上弦と下弦であり、世代交代をする柱と十二鬼月を否定するかのような不死がラスボスである鬼舞辻󠄀無惨なのでしょう。

そして、輪廻転生するかのように立ちふさがる鬼殺隊に対して、無惨は次世代を生み出さなかったからこそ、昼間にしか咲かない青の彼岸花にたどり着けず敗北した。

こういったテーマが一貫した物語だからこそ、この終わりは正しく素晴らしいものだったと思っています。

しかし、個人的にテーマとして正しいことが面白さに繋がっているかはまた別の問題だとも思っています。
ただ、芸術ではなくエンターテイメントである漫画の、エンターテイメントとして最も大きな波を作り出した本作がこの芸術的なテーマを重んじる終わりを迎えていることに胸が熱くもなりました。

 

以上となります。