【評価レビュー】亜人 著者:桜井画門
著者:桜井画門
good!アフタヌーン:#23号~2021年3月号
【評価 74点】※採点基準についてはコチラ
◆総評
原作者が0話~5話まで存在しており、それ以降は作画担当だった桜井先生が一人で描くことになっている珍しいパターンの作品です。
さらに珍しいのは、通常であれば急なバトンタッチで困惑し迷走してもおかしくないのにも関わらず、結果として1000万部が見えるレベルまで作品になっているという唯一無二といっても過言ではない作品だと思います。
個人的には4話から急に「作画担当、桜井画門先生」から「GGGGGGGGGG先生でもある桜井画門先生」に自身の成年漫画で磨いてこられた描き方が出てきている気がするなぁと邪推してしまいます。
という本作が変わった流れで生み出されている前書きは置いておいて、本作は「死んだら生き返る」という能力で出来ること、やれることを極限まで考え抜き描き切った作品だと思っています。
その「リアルさ」がオリジナリティまで昇華しているのが本作をここまで人気に押し上げたポイントだとも感じています。
フィクションにおける「リアルさ」という部分ですが、例を挙げると庵野秀明監督の持つ「こんなの(例えばゴジラ、ウルトラマン)があったら?」これを突き詰めていった先の魅力がフィクションにおける「リアルさ」だと思っている。
ただ、桜井画門先生の持つ「リアルさ」はこれとは別種の「こんなのがあったら?こうなるよね?」の「こうなるよね?」の部分を突き詰められる面白さだと思っています。
それが、「死んだら生き返る」というありふれた設定の漫画がここまで面白い理由だと思っています。
◆点数内訳
・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【19点】
ほぼ満点でも良いと思う。
佐藤というキャラ、特亜という存在。
亜人というシンプルであり、突き詰めていった設定。そして時代背景。
どれを取っても文句は特にないし、一から桜井先生が全て生み出したらどうなるんだろうと思ってはしまうが、それでは亜人の設定自体が存在しなくなるので、たらればである。
唯一挙げるなら、カイというキャラクターはどうしても回収出来なかったかなと思える。あそこで亜人に変えてしまうのもありだが、そうなると話がダレていたとも思う。
・エンターテイメント(20点満点)
【15点】
戦いが読みたかったのか、頭脳戦が読みたかったのか、人間関係が読みたかったのか。本作を改めて読み返していたが、この結論は出なかった。
本作途中の戦いは面白かったしワクワクした。それは桜井先生の持つリアルさが演出してくれたものだし最高だった。
しかし、ラストに関してはノレなかった。
やはり最終決戦というものは、大事だと改めて感じました。漫画の最終決戦というのは、読み始める前はワクワクよりも大筋がわかっているからこそ面倒な気持ちが少しはある。だが、結果的に読んでいると今まで全ての道のりが集約されることになる最終決戦は熱くなるのだと思う。
そういう意味で、本作の最終決戦は途中まで死ぬほどワクワクしたが、結果としてこの漫画の軸がわからないまま終わってしまったようにも感じる。それは、本作を最初に考えた原作者不在の影響なのかはわからないが、どうしても最終決戦のもやもやが過去の面白かったハズのエンターテイメント部分も霞ませてしまったように感じました。
・ストーリー(20点満点)
【13点】
難しいですね。大筋の流れとしては、悪くないですししっかり最後に集約していったと思う。ただ、この漫画を「ストーリーのいい漫画だったな」と評するのが難しいですね。
それは、この漫画が何を訴えたかったのか。というメッセージを受け取りづらいことが原因なのかなとも思っています。
ただ、作品の始まりの事情からもそこは致し方ないのだと思う。ただただエンターテイメントに徹した。娯楽作品であったということが本作の意義だったのかなとも思います。
物語の流れとして矛盾がなかったとしても、それ=ストーリーが良いとはならないんだなぁ。今こうして不思議に感じています。
・面白さ(20点満点)
【16点】
みんな好きだよね、亜人。
漫画の最後まで話せる人は多くはないが、本作自体を語れる人は現状では本当に多いと思う。それは、亜人という設定を突き詰めるという作品の方向性が本当に面白かったからだと思う。
佐藤という存在が出す、「こうなったとき、こうなるよね?」のリアルさが異様に面白かった。旅客機でビルに突っ込む瞬間なんて鳥肌が止まらなかった。
ページを捲らせる力は本当にすごいと思う。
結果的にその面白さを最後に集約させて爆発することができなかったのが悔やまれる部分ですが、面白い漫画でした。
・終わり方(20点満点)
【11点】
面白い漫画は、終わり方に責任を問われる。そんなことを感じさせる作品でした。
結果的にハッピーエンド?だしスッキリもしました。この漫画の続きをさらに読みたいとはあまり思わないし、必要もないと思う。
ただ、大満足の終わりではなかった。
佐藤との最終決戦だけがどうしても納得いかないんでしょうね。亜人のその後とかは正直どうでも良い。やはり佐藤というキャラクターが強すぎましたね。
この記事を書きながらずっと佐藤の結末を妄想しましたが、佐藤をスペースシャトルにくくりつけて宇宙まで飛ばして考えをやめさせるという展開しか思いつけませんでした。
んーカーズくらいの生物を出すと奇妙な展開になり、リアル路線の漫画では苦労するということなのでしょうか。
以上となります。