オタしなみ

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【評価レビュー】アスペル・カノジョ 原作:萩本創八 漫画:森田蓮次

アスペル・カノジョ

原作:萩本創八 漫画:森田蓮次

コミックDAYS:2018年3月~2021年1月

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【評価 72点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

アスペルガー症候群、”普通”には生きづらい女性と彼女を受け入れ共に生きようとする主人公を描いた本作。

普通には生きていけない女性を描きこむディティールの細かさやリアルさもそうだが、女性側だけにキャラ付けを行った恋愛ものではなく、彼女を支える主人公、男性側もリアルに描くことで二人の人生を描く作品となっているのが本作の一番の魅力だと思う。

幸せや辛さだけを描くのではなく、金や人との繋がりなど生きていく上で必要なことも描かれた人生譚。

ただ生きる日々を描くだけで面白い。そんな漫画としてある意味、真髄にも触れている作品だと思います。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【16点】

本作はある意味キャラ漫画であると思っています。
そういう意味で、斉藤さんというキャラクターは秀逸だ。
読んでいて心が痛くなるほど”本物”であることを実感させられる。

この体験は、本作でしか味わえないし斉藤さんというキャラクターだからこそのものだったと思う。

斉藤さんという特殊なキャラを薄めさせない意味でも、他のキャラについてはキャラを立たせ過ぎないという制約があったと感じている。その部分についても主人公含めリアルさを常に感じさせる良いキャラたちだったと思う。

斉藤さんというキャラをリアルに感じさえるため、日常描写や生活用品まで工夫が凝らされており個人的には本当に読み易い作品に仕上がっていた。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【11点】

この漫画は斉藤さんと共に生きていく漫画です。

目的はハッキリしているが、一生かけて支えていくというある意味ゴールが遥か先過ぎて見てみたい姿が見えづらい漫画であったとも感じます。

読んでいても最、斉藤さんが死んでしまうか、寿命を全うするかの二択しか見えない。
今日も明日も生きる。という日々の大切さを説くからこそ、エンターテイメント的要素は見せるのが難しい作品だったかなと感じます。

ただ、二人の恋愛は見ていて心地よかったです。

 

・ストーリー(20点満点)
【16点】

過去のトラウマと今の生きづらさ、未来への不安。
あらゆる苦難を日常に落とし込み12巻という長編を読ませ続けた本作の構成はとんでもなくすごいと思っています。

12巻分二人の日常が詰まっているのですが、思い返すと12巻分も感じないんです。それが何となく自分の日々の日常1年間分を思い返してもみっちり1年間を感じられないリアルさに繋がっているのかなと感じました。

二人を描いた巻数はあるのですが、"時間"という意味ではまだまだ二人の未来は存在しているハズです。その部分に於いては、まだ先を描けたなと感じるのが少し残念です。

ただ、この題材とキャラクターたちを見ても本作が大ヒットするのは難しく、12巻という巻数を続けている時点で奇跡に近いと思う。
それを著者も分かっているからこそ、二人を描く期間を決めておりだからこそ、これほど読み易いストーリー構成になっているのかとも感じました。

 

・面白さ(20点満点)
【16点】 

斉藤さんというキャラがどうなっていくのか。
それだけで本作は最後まで読者を引っ張れるほどにキャラづくりが素晴らしかったと思う。

ただ、本作はそれだけではなかった。
トラウマとの向き合い方に裁判を持ってくる展開は本当にシビれた。
それが貧乏だからこそのリスクとリアルな葛藤が入り交じり読んでいて本当に面白かった。

バイト先の変態オヤジなど、斉藤さんと横井が向き合うべき現実を考えたうえでそれをどれだけ面白く読ませるか。それを考え抜いている面白さが本作には多分にあった。

 

・終わり方(20点満点)
【13点】 

個人的には打ち切り、もう3巻は描けたかなと思っています。

各キャラクター達のストーリーが完結していないのがどうしても気になる。ただ、それは人々が生きていく上でそれぞれの問題がこの短い期間で片付くわけではないからこそ、描かなかったと解釈も出来る。ただ、読者としては読みたいんですよね。

逆に二人の結末については、読めないことはどこか覚悟していました。
二人が幸せに添い遂げることを簡単に描けるほど本作のテーマは軽くない。

読者に二人の行く末を想像させることが、消化不要ではあるけど最善のようにも思えました。ただ、第三の選択も期待しては読んでしまってはいました。

 

 

 

以上となります。