オタしなみ

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【評価レビュー】賢者の学び舎 作者:山本亜季

賢者の学び舎 作者:山本亜季

ビッグコミックスペリオール:2018年第4号〜2020第2号

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【評価 56点】※採点基準についてはコチラ

 

◆総評

銀の匙は大団円で大満足で終わったのに、なぜ賢者の学び舎は打ち切られねばならなかったのか。内容で負けてる訳ではない。むしろ命の尊さや人との付き合い方の描写など本作の方が面白いし、読んだ後心に残るシーンも多い。

ただ、エンターテイメントはしていなかった。
本作専用のツイッターアカウントも作られ、帯も豪華な推薦者をたてて営業したものの漫画好きには届いても、一般に人には届かなかった。
鋼の錬金術師を描いた後に描いたのと、ヒューマニタスを描いた後という知名度の差もあったと思うが、残念。

面白いのに打ち切られる。
完結5巻の帯には1〜4巻大重版と本当なら打ち切られるわけのない言葉が載っているので、作者自身が選んだ連載終了かもしれませんが、読者としては打ち切りという結果は変わらない。
一番悲しい結末ではありますが、本当に良い漫画だった。

 

◆点数内訳

・キャラ、世界観、設定(20点満点)
【14点】

防大医学生というだけで面白いよね。
そこを山本先生の切り口で、様々な思いと考え方を持った少年少女を出して全員が助け合い、ぶつかり合いわかり合っていく。

絶対的に面白い青春学校物として完成していました。

キャラクターたちのセリフが特に良い。
特に好きなセリフが「どうして明日の土居内が、今日と同じだって言えるの?」です。

作者の経験や考えを全てぶち込んでいる。だからこそ魂のこもったセリフが多く、本当にシビれた。

 

・エンターテイメント(20点満点)
【10点】

んーエンターテイメントはあんまりでしたね。
人として大切なことは詰まっているのですが、読んでいてすぐに楽しめるワケじゃなかった。

残念なのが、完結の3話前にようやく恋愛面が動き出しかけるという……。
遅い、遅いよ…もっとこの要素も読みたかったよ……。

 

・ストーリー(20点満点)
【10点】

これは学校を舞台にしているからこそ、ストーリーラインはブレることはない。
さらに各学年を描くことを最初からわかっているので、主人公たちが二年生になったとき彼らが人として成長していることが目に見えてわかる。

学年を増すごとに成長した彼らの魅力が変わっていき、本当に読んでいて楽しかった。

ただ結果は打ち切り。一番悲しいのは単行本の39話後の黒ページで各学年の先生が描きたかったであろうエピソードが羅列されてるページですね。

恋愛要素を一瞬出した39話後の40話の扉絵。
ハナレとおそらく真木を見つめる男鹿。絶対ここの恋愛ストーリーあったよね、、、、あったのよね、、、、、。

 

・面白さ(20点満点)
【17点】 

読んでてめっちゃ面白かった。

本作の最も面白い部分は、「成長」だと思う。
どの漫画のキャラクターも内面はあまり変わらないことが多い。多少成長していることはわかっても本作のように考え方が根っこから変わることは基本ないと思う。
しかも「変わる」と言っていますが、正しくは「成長」しているのです。
このキャラはこんな性格と考え方です。そんな説明の後「成長」した結果、考え方が少しずつ変わっている。一度で二度も三度も美味しい構成に大満足でした。

彼らの成長もそうですが、人として大切な学びが詰まってるので漫画だけでなく教科書としても面白かった。

キャラクターも個性的で、強烈な後輩キャラである徳川も面白く魅力的だった。
エピローグの徳川の結末はあまり面白くはなかったが、著者が絶対に描きたいキャラだったんだろうと思う。そんな徳川が変わるのではなく、どう成長するのか、あ〜読みたかった。

 

・終わり方(20点満点)
【5点】

本作は明らかに20巻完結くらいのボリュームで描かれていたし、そんな物語を楽しむ前提で読んでいた。

15年後のエピローグ。

作者が最初から描いてくれるのはわかっていたし、一番楽しみにしていたページでもあったがどうしてもこの駆け足ではそれが薄い。。。

面白い漫画が急に打ち切られることは、そこまで多いと思っていない。ただ、本作は面白いのに打ち切られてしまった。

もっとエンターテイメントにふって描かなかった著者が悪いのか、
売れるフックをもっと作ってあげなかった編集者が悪いのか、
こんな表紙が売れませんと止めなかった出版社営業が悪いのか、
面白いのに全力で売らなかった書店が悪いのか、
SNSで面白いと呟かなかった読者が悪いのか、

わからないけど残念!

 

以上となります。